ノケモノたちの夜 フレイムナイト 第1夜感想
もう一度この作品の新たな一幕を読めることに多大なる感謝を。
かつての契約者
マルバスは長く生きてますから、当然過去にも契約者がいます。というよりマルバスがここまで長らえているのは契約者から対価を受け取ってこそ。そんな過去の契約者の話を聞かされたときに『元カノ』と評すスノウがめちゃくちゃ面白かったですね。彼らしい表現だ。
そんな彼女とのかつての契約は『花が咲く初夏まででよいから自分の代わりにバラたちを見届けてほしい』というもの。そしてこれを文言そのままに取り、水をやったりお世話をすることもなくただ見届けたというわけです。言葉の真意がわからないのが悪魔らしいというかなんというか。
言うまでもないことですが、代わりに見届けてほしいというのは単に『ずっと見てる』ということではなく『自分の代わりにあの花たちを咲かせてほしい』という意味合いです。
当時のマルバスにはそんな人の言葉すらわからなかった。
ですがウィステリアと出会ってから様々な経験をした今のマルバスはあのときのオフェーリアの言葉の意味がわかるわけですよ。
そのことを義務と誠意(やくそく)という言葉で表現するの、相変わらず言葉選びのセンスが光るー!!ってやつですね。
これは、あのとき果たせなかった約束を果たすためのお話。
マルバスとオフェーリア
そんなときのマルバスでしたが、オフェーリアとの関係は決して悪いものではなかったと思います。
オフェーリアは夜に光るバラの開発に人生をかけましたが、それはマルバスの好みからです。オフェーリアはマルバスにどのバラが一番好きかを問いましたが、その答えを選んだ理由は『夜でも月明かりで見えるかもしれないから』でした。
オフェーリアはマルバスのために、夜に光るバラの開発に着手したのです。
そして彼女の『趣味こそ本気で取り組む主義なのよ』という言葉。
忘れるわけもありません。
ノケモノたちの夜第2夜でのマルバスの言葉です。
しかもこのシーンのときにマルバスはバラを一瞬見てるんですよ。オフェーリアを思い出しての本編2夜での言葉となってるわけです。当初から想定していたのかどうかは定かではないですが、改めて物語を作ったときにこういうことにする拾い方が上手すぎます。
マルバスの中にオフェーリアはいる。そんなことが感じられてよかったですね。
マルバスとウィステリア
今回の一件はマルバスとオフェーリアのことでありウィステリアは関係ないのですが、そこに対しての関わらせ方もまた良かった。
今のマルバスは、過去のことに対して『あれはああいうことだったのか』と意味を感じることができます。ですが過去のことなので今回のオフェーリアのバラのように取り返しのつかない状態になっていることもあるわけです。
せっかく思い出しても、後悔だらけになってしまう。大切なことに気づけていっているのに、それが常に後悔とともにだったら辛いだけです。
マルバスにそんな想いはしてほしくない。
だからウィステリアはマルバスに協力するんですよね。
自分がマルバスにそんな想いをしてほしくない、だからこれは私のことでもあるっていうのがホントいい言い回しですよね。
奥にいるのは
さて、この領域ですが侵入者を逃さない仕掛けに加えて足の生えた植物という異形の使い魔を派遣するなどやばいことになっています。マルバスいわく、この領域の維持には桁違いの魔力が必要なようです。
となれば、真っ先に思いつくのは十三災なわけですね。
ここからは単行本おまけのネタバレになりますが、8巻おまけで十三災の厄災の内容が記されています。
その中に緑災があるんですよね。
多分、コイツが元凶だとだと思います。
それにしてもこんなやり方で人間を捕食してるの、普通に考えたらヤバいやつなんですがどのように着地させるんでしょうね?
おわりに
この感想記事を書くにあたって単行本も読み返してきたわけですが、新たな発見があって面白かったです。単純なアニメ化記念の特別連載だぜ!っていうお祭り企画ではなく、この連載には本気の密度が感じられます。
いつまで続くかわかりませんが、毎週非常に楽しみにしています。
…あの、ところでダイアナとナベリウスは。