ノケモノたちの夜 第8夜感想
マルバスとウィステリア、二人の旅の始まりの回。
景色の見え方
言うまでもないことですがこの二人には色々違いがあります。まず種族違うし。
その中で今回は景色に対する感じ方にまず差があるんですよね。
長寿のマルバスからすれば幾度となく見た景色で思うところがないものかもしれません。いやまあ人間であれば例えば四季の変化によって景色が変わることに何か感じるところが出るかもしれませんが、悪魔にそういう価値観があるか?と言われればわかりません。人間じゃないですからね。
とまあマルバスからすればただの景色ですが、ウィステリアにとっては初めての体験なんですよね。自身の故郷と首都ロンドンの例の教会付近しか世界を知らない彼女、しかし初めての体験でありながら自身の目でそれを見ることは叶いません。悲しい。
悪魔と人間の感性の違い、マルバスとウィステリアの状況の違い。
色々違いがある二人です。
景色の感じ方
目に見えないウィステリアにとって、マルバスの言葉が自身の視界になるわけです。なのにマルバスときたら自分の感想しか言わない。こりゃ困った、まあマルバスからすればその感想なのかもしれんけど。
そこからウィステリアに求められ、マルバスは『見た景色の情報』を細かく伝えていきます。もし横にいるのが私達ならそんなの伝えられたって『見ればわかるわ!』なんですけど、ウィステリアは『見れば』ができないのでただ情報を得られるだけでありがたいんですよね。
そして、幾度となく見た景色が新鮮に感じるマルバス。
なぜ新鮮に感じるのか?これまで景色を見たときとは違い、今はウィステリアが横に居て彼女の反応がある。自分が退屈に感じる景色を全力で楽しむ娘が側にいることが大きな違いです。
ざっくりいえば新鮮に感じた理由は『ウィステリアが居るから』に尽きるわけですよね。マルバスはなぜだろうか?とか言ってますが、読者からすればまるわかりです。ただこの理由の部分を安易に言葉で示さず、状況の描写だけで読み取れるようにしてるのが良いなーと思います。
示さないけど読み取れる、そのバランスが絶妙なんですよね。
おわりに
車窓回は『二人で居ること』の意味が強く出ているので、序盤のとても好きな回の一つですね。二人の関係性が好きになると、ただ二人で居ることに意味が出ている回が好きになる。これは読み返し時の大きな特徴だなーと思います。
…さて、車窓回が終われば次は第9夜です。
そう、我らがダイアナちゃんの登場です!!
いやーめっちゃ楽しみー!!!!!