ノケモノたちの夜 第1夜感想
前回記事でも宣言しましたとおり、ノケモノたちの夜の感想記事を書いていきます。
まずは全ての始まりの1話から。
人ではないノケモノ
舞台は19世紀末のロンドン、産業革命も終わり発展が一段落した時代でしょうか。この時代では悪魔の影響力も弱まっていて悪魔が見えるものがほとんどいない世界。産業の発達により悪魔よりも頼れるものが生まれた、文明の発達により悪魔への恐れが薄くなっていったと考えると面白いものがありますね。
人から認識すらされなくなった大悪魔マルバス。
この作品におけるノケモノの一人です。
なのでまあ珍しく自分のことが見える存在に会うと気になっちゃうんでしょうね。最初は単にそれだけ。でもそこから生まれた縁から毎夜会う関係となったわけですね。なんか書き方がやらしいな。
人扱いされないノケモノ
マルバスが視える少女ウィステリア。物乞いで稼がされ、稼ぎが少ないとぶたれる。おおよそまともな扱いをされてるとはいえません。そんな彼女にできた唯一の楽しみがマルバスとの夜ですね。なんか書き方がやらしいな。
悪魔が視える目は『人と違うものが視える』という点で気味悪がられたようですが、この目のおかげでマルバスと出会えました。その点は良かった。
…そんな彼女の唯一の楽しみすら奪われるんです。
神父は実際は人買いで、ウィステリアは顔見せのために物乞いをさせられていた。神父にとってウィステリアは金になる商品でしかない。子供をいたぶって興奮する変態のもとに売られる。これまでもひどい扱いだったのに、そこから更に落とすのひどすぎませんか?と思います。
マルバスに助けを求めるも、対価なしでは悪魔は何もできません。
それが悪魔の大網、故にマルバスは手出しができない。
ならば対価を払う。その命を引換えに。
酷い大人のおもちゃにされるぐらいなら死んだほうがマシ。
そんな切実な願いすら、マルバスに『これ以上もらっても』と断られてしまいます。
ウィステリアめっちゃ可哀想じゃないですか??
これまでもロクな人生じゃないし、これからもロクな人生じゃないし。
マルバスの隣で話を聞きながら眠る。
ロクでもない人生の中の唯一の楽しみすら奪われる。
どんだけ不幸にすれば気が済むねんって話ですよ。
改めて読むと『ウィステリア可哀想だからなんとかしてやってくれ』という気持ちがとても強くなりました。
ノケモノたちの契約
だからこそ、大網を破ってマルバスが助けにくるのは『世界に救いはあった…』というテンションになりますね。おおげさかもですが、でもまあホント『良かったねえ…グスン』という気持ちです。
誰からも認識されない世界で永遠とも言える永い時を生きてきたマルバスもまた世界に退屈しており、そんな彼が久々に感情を動かされたのがウィステリアとの会話だったんですよね。なんにもいらないと思っていた彼が欲しいと求めるものがそこにあった。だからこそ大網を破り自らの身を挺してまで助けに来たわけです。
そして…。
マルバスと出会えたきっかけの目を躊躇なく差し出し『共に生きてください』という契約を出すウィステリア。『共に生きてください』というのがいいですよね。ただ二人で居られるだけでいいんですから。そのためなら目も惜しくないわけです。
こうして目が見えなくなったウィステリアに、世界のいろんなことを教えるということで『共に生きる』こととなったマルバス。まさにノケモノたちの物語と言えるでしょうね。
おわりに
1話は二人の関係性が描かれており、またウィステリアの境遇から感情移入してしまいのめりこめたように思います。良かったのではないでしょうか。
ウィステリアを探してるお兄さんっぽい人も出てきてますし、どうなるんだろうって感じですね。まあ全部知ってるんですけど。
こんな感じで次回も書いていきたいと思います。