ノケモノたちの夜 最終夜感想
どのようなものにも終わりはあるものですが、やはりこの終わり方は残念だなあ…というのが正直な感想です。
ただその状況下でも最大限できることをやったような、素晴らしい最終回だったと思います。
では…最後の夜に思いを吐露して。
新たな同行者
改めて湖水地方へやってきた一行。そこにはタケナミとスノウの姿も。この選択、ソル団長の気遣いも見えますし変化も見えますね。気遣いは無論スノウが派遣されていること。ウィステリアと一緒にという団長の計らいでしょう。
変化は団長の指示から読み取れます。ウィステリアとダイアナがいる限りマルバスとナベリウスが人の敵になることはないから、二人の少女を守れというもの。
要はマルバスとナベリウスが契約者との間に持つ絆を認めてるわけなんですよね。悪魔即滅殺でないのも驚きですが、それ以上にマルバスとウィステリアそしてナベリウスとダイアナの2組の関係性を認めているのが大きな変化です。ダンタリオンとルーサーのときは絆を読みきれなかったことで大きな被害を出してしまいましたが、そこからちゃんと成長してるんですよね。
スノウが加わるのも単純に嬉しいですが、タケナミが入ることで大人が増えパーティに安心感が生まれますね。前の4人だとダイアナぐらいしか精神的に大人がいなかったですからね。マルナベは小学生男児だしウィステリアは少女なので。
それにしても、経験からタケナミに若干の苦手意識あるウィステリアが可愛らしいですね。そこからスノウの過保護→土下座のコンボも面白いです。キャラが会話してるだけで永久に見てられるなあ。
食べ物をはむはむするウィステリアに抱きつくスノウ、二人とも可愛いし。
ウィステリアをなでなでしてるナベリウスが完全にいい兄ちゃんだし。タケナミ…。
これはホント、キャラ造形力のなせるワザだなーと思います。
キャラがちゃんと立ってないとこうはいきません。
You mean the world to me
マルバスとウィステリア。
この物語はこの二人から始まりました。
最初に出会ったときに比べると二人とも随分と変わりましたね。
マルバスの変化は前話感想でもだーいぶ長いことかけて語りましたが、今話でもまた示されました。初めての出会い、直後連れ去られるウィステリアを思わず追いかけてしまったわけですが、そのときは知らなかった表情の名前がわかるようになりました。
そしてなにより、君よりも先に死にたいという心の吐露。男ってのは弱いんですよね。これ完全なイメージなんですけど、老夫婦の奥さんが死んだら男は後を追うようにすぐ亡くなりますけど夫が死んでも女は割とたくましく生きてますよね。男、ホント弱い。
ただまあ、この発言からわかるのは。
マルバスにとって、ウィステリアはもう失うことが考えられないほどの存在なんですよね。ウィステリアがいない世界で生きることなど耐え難い。故に彼女よりも先に死にたいと思わず言ってしまったのでしょう。
そんな情けない男(言い方)マルバスを支える少女ウィステリア。彼女は本当に強くなりましたね。1話こそマルバスに助けてもらうしかなかった彼女ですが、ブラックベル家編ではともに戦えるようになり、最終話では弱音を吐くマルバスを支えられるまでになりました。
サブタイトル、直訳すると『あなたは私にとって世界を意味する』であり『あなたは私のすべて』みたいな感じでしょうか。それほどに大切な存在だということかな。
マルバスにとってのウィステリア。
ウィステリアにとってのマルバス。
いずれをも示す表現ですね。
最終幕からの想像
さて、ラストは未来の旅路が描かれていたわけですが。これまた想像の余地があるラストでしたね。いくつか想像を書いてみます。
・ウィステリアの視力は戻ってる?
目の作画に黒い瞳が戻ってますし、マルバスの方を見て会話してますよね。マルバスは視力をなんとかして戻したいって言ってましたし、なんとかしたということでしょうか。
・マルバスとナベリウスは悪魔でなくなってる?
4人のときは人間態でいないと見かけのパーティが可愛い少女二人だけというとても危険な状態ですが、今はタケナミもスノウもいます。絡まれることへの抑止力として二人が人間態になる必要は特別あるわけではありません。悪魔の姿で居てもこの4人が気にするとも思えません。
そう考えると、この二人は悪魔でなくなったのでは?とも思えるわけですね。マルバスについていえば前述のウィステリアの視力とも関連してるかもしれませんね。
元々人間だったわけですし、可能性としてはあるのかも。
・ダイアナの髪型が可愛い?
いやいうまでもなく可愛いですよね!!
まあ元がいいので何でも可愛いんですけど!!
もはや想像でもなんでもなくただの感想ですね。
ていうかダイアナが可愛いのは世界の共通認識なので改めて言う必要もないですけどね!!
なんやこいつ。
終わり方について
作品のファンの一人としてはとても残念なことですが、この作品は未解決の事柄を残したまま終わってしまいました。三ツ目との決着もついてないし、未登場の十三災も半分以上いるし。
途中で終わってしまった。そう考えてしまうのはやむをえないかと思います。
…ただ、それでも言いたいのは。
その状況下でも素晴らしいまとめ方をしたと思うんですよね。
今回の話ってロンドン対魔戦線編のエピローグとしても全然使える話だと思うんですよ。突然のシトリ(そういえば生きてたね)に邪魔されてできなかったピクニックを改めて行いながらのお話でしたから。
最終話付近の数話でも三ツ目の謎やウィステリアの感知能力など色々な仕込みを回収しながらお話を作っていました。
ロンドン対魔戦線編の本来の流れに、終わってしまう物語をできる限り綺麗にまとめるための要素を組み込み、その上で終わる期限までに成立させる。
いやなんかサラッと言ったんですけど、ほんと凄いことやってると思いますよ。
先生の構成力が光ってると思います。
おわりに
そんなこんなで最終話。悲しい。
しかしたとえ途中で終わってしまったとしても、この作品と出会ったことや読んで感じたことは無駄ではなかったと言えます。私はそれをこの作品のマルバスから学びました。
私のダイアナも家族を失った辛さを乗り越え前を向いて歩いていったので、私もこの作品が終わった悲しさを乗り越え生きていきたいと思います。大げさか?
ノケモノたちの夜が終わっても、先生の台詞回しのセンスや構成力そして絵の表現力がなくなるわけではありません。
次回作を楽しみに待っていようと思います。個人的にはね。
素晴らしい作品をありがとうございました!!