ノケモノたちの夜のシトリについて
私もまさかこの作品のキャラで最初の個別記事が彼になるとは思ってませんでした。
ただ次話以降いよいよシトリが本格的に戦闘するでしょうから、ロンドン対魔戦線編の今後の考察も絡めてシトリについて整理しておこうかなと思った次第です。
キャラとしても感情が非常に濃く魅力的だと思いますので、ウィステリア達からすれば厄介な存在ではありますが私は非常に好きなキャラです。
ということで、行きますよ。
シトリとはどういう悪魔か
プロフィール
湖水地方の湖でずっと眠っている、崩国の十三災の一柱ですね。
得意とするのは精神に作用する気体の生成。特定の領域を人間の認識から阻害できる霧の香炉、低級悪魔を呼び寄せる誘いの香炉など気体による香りを利用して様々なことができるようですね。シトリは幻術タイプですね。
上記のことは彼のプロフィールみたいなものです。
その内に秘めた思いを解き明かしていこうと思います。
大切に想うもの
シトリにとって最も大切なものは、かつて十三災を束ねていた主でしょう。その主は限定解臨を使えたようですが、ウィステリアが同様に限定解臨した際に『殺してやる』と息巻いています。怖っ。
恐らくは…シトリはかつての主に対して強い思い入れがあり、特別な存在なんですよね。その主『しか』使えなかった限定解臨をウィステリアが使ったことで、主の特別感が揺らいでしまったからなんですよね。
あの技は憧れのあの人しか使えなかったのに!!という感じですか。
ただのめんどくさい厄介オタクですね。
ダンタリオンが『喪失の痛みは普通なら時間が解決する』と言っていたところを見ると、かつての主は既に亡くなっているのでしょう。悪魔と契約していたということは人間でしょうから、まあ当たり前の話。
既に故人である主に対して並々ならぬ感情があるシトリですが、彼が滅多なことでは浮上せず湖で寝ているという情報を踏まえれば腑に落ちます。
シトリは起きて過ごした時間が他の十三災に対して少ないんですね。
だからかつての主を失った悲しみや喪失感がまだ色濃く残っている。他の十三災が何百年という時の中で各々整理をつけている一方、シトリは何百年の殆どを寝て過ごしていたのでしょうね。
もっと言えば、長く生きることに早々に倦んでしまったのも『主が死んだから』という可能性がありますよね。主がいないこの世界でずっと生きていて何になるのか?そんな思考になったのかもしれない。
このように、描写からシトリの主に対する強い感情が読み取れると思います。
この主に対する強い想い。
そしてそれが何百年経っても残っている理由。
ここは彼を語る上で外せない要素の一つでしょうね。
今の彼と世界
目覚めたシトリが今思うことは45話で濃く描かれていたように思います。
起きてから、なんだかずっと、
焦りのようなものを感じ続けている。
45話でシトリはこんなことを思っていました。
それは人々の技術の進歩やそれにより悪魔の存在が希薄になったことで、悪魔が過去のものとなってきている『世界』に対しての感情も関係しているのでしょうが。
もっと強い感情は契約者に向けられていましたね。
他の十三災のマルバス、ナベリウス、ダンタリオンはそれぞれ契約者を持っています。先程も述べたように、ウィステリアが限定解臨を見せた時は強い怒りをむき出しにしていました。
他にもあります。ダンタリオンが『私はたまたまルーサーという逸材を見つけたから契約しただけ』と『別に無理して探さなくてもいいだろう』という意と同時に『ルーサーすごいだろー』という自身の契約者の自慢(とシトリは捉えたのでしょうか)に対して『苛立ち』を感じていました。
シトリが感じた苛立ち。彼が主への強い想いを未だ抱いていることと無関係でないと思います。
他の十三災は既に主に代わる契約者を見つけています。シトリが主に対して強い想いを抱いているように、他の十三災は今の契約者に各々強い想いを持っています。
けど自分は今でも主が一番。無意識下で感じているでしょう。
自分だけ進めていないことを。
それがシトリが感じた『おいていかれたような気持ち』なんだと思います。もっといえば、自分にはないものを持っているマルバスたちに嫉妬しているのかもしれません。
契約者たちは悪魔という人々に忘れ去られたノケモノと出会っており、契約者と出会ったことで『悪魔と契約者』という単位においてはノケモノではなくなっていると思います。
でも、シトリは未だにノケモノなんですよね。世界から取り残されたまま。
つまり真のボッチ。
それも彼の主に対する強い感情に起因しているのだと思います。
世界に追いつくために
そして、だからこそスノウを洗脳し契約者にしたんですよね。
洗脳により作り出した契約者は、たとえ限定解臨ができたとしても『絆』があるわけではありません。あくまで洗脳で絆があると思い込まされているだけ。いわば偽物ですよ。
そんな偽物による限定解臨でマルバスたちを葬ることで、マルバスやナベリウスが持ってる絆が無価値であると証明しようとしているんですよね。自らが嫉妬した十三災たちと契約者の絆を幻想だと否定すべく、このような手段を取るのでしょう。
…いや、やってること幼いな!!!!
というのが正直な気持ち。ただそれもほとんど眠っていて起きている時間が短いため人生(悪魔生?)経験が短いが故なんじゃないかなと思います。普通は時の流れとともに成熟していく精神ですが、彼の精神はずっと眠ったままでしたからね。
…ただね、シトリもどこかでは絆がある契約者がほしいなと思っていると思うんですよ。最初にウィステリアに出会った時、マルバスとの関係に興味を示していましたし。嫉妬とは羨むからこそ起きる感情ですからね。
十三災は今の世界でも楽しく生きています。
それは今の契約者との間に強い絆があるから。
同じように、今の世界で楽しく生きたい。
そのように変わりたい。
そんな気持ちがあると思います。
彼の服装が現代の装いに変わっているのもそんな気持ちの現れじゃないでしょうか。
だけどちょっと屈折してしまって、十三災が持つ絆をぶっ壊したいとなっているのが今の彼なんじゃないですかね。
今の世界で楽しく生きたいという感情は『世界においていかれたくない』に歪んでいる。そんな気がします。
おわりに
ということで色々考えてみたことをまとめてみました。答えはもうじきわかりますね。
結局の所、主に対する強い感情がすべての要因でないかなと。そこから派生して色々な行動が出てくるのがとても面白いと思います。強い感情が故に行動するキャラクターは大好きですよ。
本当は洗脳スノウが彼とどのような契約をしたかも書きたかったのですが、シトリだけで膨らみすぎたためやめました。1巻でマルバスに『ウィスが傷付いたらテメエを殺す。悪魔に魂を売ってても。』とかモロフラグになりそうですよね。
改めて読み返すと、今後回収されそうな描写というか仕込みに変わりそうなポイントがたくさんあるなあと思った次第でした。
これからも楽しく見ていきます。